Penguin-AppliedPhysicsのブログ

応用物理に関することを色々と。

令和1年7月 一陸技「無線工学の基礎」A-3

A-3 図に示すような透磁率がμ[H/m]の鉄心で作られた磁気回路の機路abの破束φ[Wb]を表す式として、正しいものを下の番号から選べ。ただし、磁路の断面積はどこもS[m^2]であり、図に示す各磁路の長さab、cd、ef、ac、ae、bd、bfはl[m]で等しいものとし、磁気回路に漏れ磁束はないものとする。また、コイルCの巻数をN、Cに流す直流電流をI[A]とする。

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そもそもで、磁気回路とは…

環状鉄心に被覆された導体を巻き付け、導体に電流を流すと磁束(磁界)が発生しする。このような磁束の通り道を磁気回路(磁路)という。

とのこと。

当方は、どちらかというと高周波よりの電磁波屋さん(そんな領域あるのか…)なのでイマイチ磁気回路というものに馴染みがありません…

そこで、磁気回路のメイン人物たちをおさらいします!

まずは、起磁力!

起磁力は、磁束をどれだけ発生させるかの値を示します。

 F_m = N \times I

コイルの巻き数 Nと電流 Iに比例します。コイルの巻き数が単位を持たないので、起磁力の単位は Aになります。

次に、磁気抵抗になりますが、名前の通り磁束φ[Wb]の通りにくさを表します。

 R_m = \frac {l}{\mu \times S}

電気抵抗と同様に、長く細ければ抵抗は大きくなります。単位は H^{-1}です。

さて、磁気回路にもオームの法則がありまして、

 R_m = \frac {NI} {\phi}

です。磁気抵抗は電気抵抗と同様に抵抗の役割を持つと言いましたが、起磁力は起電力、磁束は電流に該当します!(覚えやすい!)

momoyoshiblog.com

↑詳しくはこちら

 

さて、前置きが長くなりましたが…

今回の問題は磁束 \phiを求める問題。起磁力となる巻き数 Nと電流 Iは問題中にあります。従って、磁気回路のオームの法則を考えると、磁束 \phiを求めたければ磁気抵抗 R_mを求めればいい訳です。

ただ、今回は図のように並列回路です。(1周のうちに、太さなどが変われば直列となります)

その理由は、先ほどのURLを参照ください。

 

どのような並列回路かと申しますと、

ab間(長さ l)にコの形のacdb間とaefb間(それぞれ長さ 3l)が並列になっているような回路です。

電気的な回路で考えると…

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(手書きで失礼します…)

左の図ようなイメージです。あとはこれを右のように書き換えるとイメージが付きやすいかなと思います。

あとは合成抵抗と同じ考えですから、

並列部分と直列部分の足し算です。

合成磁気抵抗 R_{m0}

 R_{m0} = \frac {3R_m \times 3R_m} {3R_m + 3R_m} + R_m = \frac {5} {2} R_m
になります。(左の分数項が並列の合成磁気抵抗で、そのあと直列の合成磁気抵抗の足し算してます)

ここで

 R_m = \frac {l}{\mu \times S}

でしたから、

 R_{m0} =\frac {5} {2} \frac {l}{\mu \times S}

あとは、磁気回路のオームの法則に当てはまるだけですね!

先ほどの磁気回路のオームの法則を少し変形して、

 \phi = \frac {N \times I}{R_{m0}} = \frac {2NI \times \mu S}{5l}

 

答えは、2になります!(イェーイ)